「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

いつも一緒!

一緒に暮らし始めて数年が経過した。その後のぺいと私は、年月を重ねるごとに、お互いに分り合える関係になっていったように思う。それと、子猫だった頃、隔離して寝ていた事が影響したのかどうかは分らないけど、私が、家の中を移動すると、ぺいも同じ場所に良くついてきた。例えば、私が、トイレに入れば、トイレのドアを手で開けて中に入ってくるし、お風呂に入れば浴室に入ってくる。そして、部屋の椅子に座っていれば、椅子の真後ろや真横にいるといった具合だ。本来、猫は自由気ままなはずなのに、ぺいは、とにかく私の近くで、いつも過ごしてくれる猫だった。

 

例えば、お風呂の場合の経緯を例に挙げると、それは、ぺいと暮らし始めて暫くした頃だったと思う。ある日、私がお風呂の湯船に浸かっていると、浴室の扉の前にぺいの姿が見えた。なんだか中に入りたそうだ。まさか、猫は水が嫌いなはずなのに・・・。そこで、少し扉を開けてみる。すると、なんと浴室にまで入ってきた。そして、水道の蛇口に口をつけて水を飲んだかと思えば、ユニットバスの淵に座って、湯船に浸かっている私の様子を見たり、湯面の様子を眺めている。そこで、私は、手を湯面から出したり入れたりしてみた。すると、手の大きさが大きく見えたり小さく見えたりする。ぺいは、それに興味を持ったみたいで湯船の中に手を突っ込んできた。そのような事もあり、その後、私が、お風呂に入ればぺいも必ず浴室に入ってくるようになって、浴室では、そんな遊びが恒例になった。

 

それと、もちろん生活のリズムも同じだった。私が、夜、寝る前に歯磨きを始めると、ぺいは、寝ていてもパッと起きて、水を飲みに行き、私と同じようにトイレも済ませて一緒に寝るというのが気づいた時には自然の流れになっていた。でも、この流れは、ぺいとの生活が長くなるにつれて逆転する事すらあった。それは、私が、寝る準備をしなくても、ぺいは、いつも同じ時間になると、水飲みとトイレを済ませて寝るようになったからだ。元々、猫は、時間に正確らしい。それにしても、猫は夜行性のはず。それなのに人間と同じ生活リズムで一緒に寝てくれるなんて嬉しい。私は、ぺいが寝る準備を始める様子を見て、自分も早く寝なきゃと気づかされたし、夜更かし自体も、ぺいの事を考えて余程の事がない限りしなくなった。

 

その後、朝を迎える。さすがに猫は早起きだ。私が起きた時には、大体、カーテン裏の朝日があたる場所で外の様子を見ている。そして、私が、目覚ましの音とともに起きてベッドから出ようとすると、ぺいもカーテン裏から待ってましたと出てくる。私が、朝一番にやるべき事は、もちろん自分の事ではない。歯磨きも後回しだ。とにかく、お腹を空かせているぺいに餌と水をあげる事からスタートする。そして、平日であれば、それから慌ただしく会社に出掛ける準備を始める。いつの頃からだったかは記憶にないけれど、スーツを着て出掛けようと思うと、ぺいが私の足元に纏わりついてくるようになった。これがまた容赦ない。私を外出させたくないようで、ズボンを噛んで止めようとしたり、とにかく必死なのだ。一度、ズボンを破かれてしまった事すらある。それ以来、私は、カバンを闘牛士のマントみたいにして、足元に向かってくるぺいとの間に壁を作って逃げるように部屋から脱出するようにした。そして、玄関のドアを閉めようとすると、ぺいは、もう力及ばずという感じでこっちを見ている。そして、「じゃあ、ぺいちゃん、言ってくるよ~お前の餌を稼いで来るからな~」なんて事を言いつつドアを閉める。平日の朝は、いつもそんな感じだった。でも、これは、朝から仕事に出掛ける日に限っての事だった。きっと、スーツを着て外出しようとした時には、長い時間、戻ってこないという事を知っていたのだと思う。

 

それから、今度は帰宅の場面だ。帰宅の時には、玄関のドアが開く場所で待ち伏せされている事が普通だった。それで、ドアを開けると同時に隙間から外に出ようとしてくる。とにかく外に出たいのだ。でも、外には出せないからドアを閉めて部屋の照明を点ける。すると、突然明るくなるので、人間と同じで眩しそうにする。そんな時のぺいの眩しそうな表情も可愛い。だから、「ぺいも眩しいんか~」なんて声を掛けてやる。帰宅した時も、まずは、猫の事だ。餌をあげると待ってましたと、美味しそうに食べる姿が嬉しい。言葉では表現出来ないほど嬉しい。美味しそうに食べると言えば、時々、ペット用のおやつを食後にあげていた。でも、おやつは人間と同じでクセになってしまうみたいで、おやつをあげないとイライラしてくる。そんな時、普通の猫だったら、「ニャー」と泣いたり、足元にすり寄ってきたりするはずだ。でも、うちのぺいは、そんな生易しいものではなかった。なんと、不意に私の足をガブっと噛んで一目散に逃げるのだ。だから、私は、なんて猫だと思って、「こら、ぺい!」と言って捕まえる。捕まえたら、ぺいの口を手で摘んで、「こら、ぺい!悪いのはこの口か」と怒る。でも、直ぐに頭をなでなでしてやって、「ぺい、お前、このおやつが欲しいんか?やっぱり、ぺいもおやつ好きだよなー」とか言って、結局、せがまれると、いつも、おやつを与えてしまう。完全に親バカだ。

 

そして、お互いに落ち着いたら、恒例のスキンシップタイムだ。もし、私が、忙しくて相手に出来なくても、相手にするまで執拗に求めてくる。例えば、椅子に座っていれば、椅子の背もたれを引っ掻いてくる。そんな訳で、うちの椅子はボロボロになった。ちなみに、スキンシップの順番は大体決まっている。まず、最初は、私へのキスから始まる。猫のキスというのは、猫同士が挨拶として親しみを込めて行うもので、敵意がない事を示す行為のようだ。まさか、私は、猫とは思われていないのだろうけど、親しみを持たれている事に違いはないようだ。そして、その後は、私のお腹の上に乗っかってきて前脚でお腹をモミモミしてくる。このモミモミにも意味があるらしい。どういう事かというと、子猫は母親のネコがミルクを出すのを促進する為に、生まれた時から本能的にお腹をモミモミするようで、それは、猫の最も大きな愛情表現のうちの一つのようなのだ。まさか、私は、母親とは思われていないのだろうけど、多分、乳離れが完全に出来ていない早い時期に母親から引き離された影響か何かが残っているんだろうな、と思うと、なおさら存分にモミモミさせてやりたかった。そして、キスとモミモミが終わると、今度は、私の胸元付近を服の上から、ひらすら舐めてくれる。時間にすると、五分から十分ぐらいだ。その間、私は、ぺいの背中をなでなでしてやる。ちなみに、この舐めてくれるという行為は、猫が猫に毛繕いをしている意味と同じらしくて、私を仲間として認めてくれているという証拠のようだ。そういった訳で、キスとモミモミと服舐めという一連の順番でスキンシップが終わる。ぺいは、毎日のスキンシップが至福の時間なのかもしれない。でも、私も、日中に溜まった仕事の疲れやストレスをリセットすることが出来たし、スキンシップの時間は本当に至福のひとときだった。

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