「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

三月十五日(土)

きっと、猫は食べるという事が、間違いなく人間以上に幸せな事の一つなんだろうと思う。私は、もしかしたら扁平上皮癌かもしれないと感じた日から、ぺいが大好きだった食べ物を、とにかく惜しみなく与えるようにしてきた。たとえば、ペット用のおやつとして売られているカニカマ。本当に大好物な食べ物の一つだった。ただ、カニカマは、あくまでおやつなので、普段は、与えたとしても少量に抑えてきた。そんなカニカマを口が悪くても食べやすいように少し細かく切って、高級なペットフードの中に沢山混ぜてみた。すると、ぺいは、目の色を変えて食べた。私は、その嬉しそうに食べてくれる様子が凄く嬉しかった。でも、それから間もなく、本当に癌だという事が分かって、その癌が進行するにつれて、大好物だったカニカマでさえ食べなくなった。それでも、ここ数日、何とか食べさせたいと思って、マタタビを振りかけてみたりもした。でも、マタタビでさえ全く効果がなくなった。本当は、食べたくて仕方がないはずだ。でも、口の中が痛くて食べられないのだろう。そして、今朝になると、ついに一口も食べ物を口にしなくなった。そして、暫くすると、少し久しぶりにスキンシップを求めてきた。それは、何と、朝の九時頃だった。実は、スキンシップの時間帯は、夜が普通で、休日には、昼という事もあったけど、朝の時間帯というのは、過去に全く記憶がない。そうして、スキンシップが終ったら、また、私の足と足の間を掻き分けるようにして、足の間で眠りだした。足の間で寝るというのは、先日と合わせて二回目だ。ぺいの身体が足に密着して、ぺいの体温を感じる。もしかして、ぺいは入院するという事を理解しているのではないだろうか?入院で暫く離れてしまう前に、それと、手術の前に、私の体温をしっかり感じておきたい。気のせいか、そんな思いが、ぺいの体温と一緒に伝わってくるような気がした。本当に愛しい。私は、ぺい大丈夫だからな。きっと良くなるからな。手術頑張れよ。と思った。そんな思いを、私の体温と一緒に伝えた。

 

 そうこうしているうちに、時間は夕方になった。そこで、あらためて、大好物の食べ物を与えてみた。でも、やっぱり、もう食べてはくれない。もし、今夜、食べなければ、丸一日絶食した事になってしまう。まだ、T動物医療センターへの入院まで二日もある。私は、もう一度、T動物医療センターへ行く前の繋ぎとして地元の病院へ向かった。先生は、皮下注射と皮下輸液をしてくれた。病院から自宅に戻る頃には、すっかり周囲は暗くなっていた。

 

 そして、夜になり、色々と雑用を終え、落ち着く事の出来る時間が出来た。私は、昨日から書こうか書くまいか悩んでいた手紙を書くことにした。T動物医療センターの先生宛ての手紙だ。もちろん、入院する時、私が、ぺいを病院に連れて行けるなら手紙を書く必要なんてない。でも、私も仕事を休んでばかりはいられない。それで、入院は母にお願いしたのだ。私は、手紙を書く事で、手術や治療が少しでも良い方向に作用してくれればと思った。ぺいのために出来る事があるなら何でもしたかった。

 

 しかし、そうは言っても、扁平上皮癌は、かなり進行してしまっている。そして、猫の扁平上皮癌は、手術をしたとしても余命三か月から半年程度だという事と、また、既に肺に転移している可能性が高い事も認識している。とりあえず、ぺいに話かけてみる。「ぺい、お前、長生きしたいよな?」「まだ、俺と一緒に暮らしてたいよな?」「どうだ、ぺい?」当然、何も返事なんてものはない。だけど、そんなぺいの様子を見ていると、なおさら、私の意思が大事だという事に気づかされる。そう考えると、益々、私のぺいを守りたい気持ちは、強いものになった。まだまだ一緒にぺいと暮らしたい。ぺいに、幸せな日々を、もっと感じていてほしい。そんな事を思いながら手紙を書き始めた。すると、途端に涙が出てきた。そして、それから、書いた手紙を封筒に入れるまでの間、ずっと涙は止まらなかった。

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(先生宛てに書いた手紙)

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