「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

四月二十四日(木)

四回目の放射線治療日。今週は、もうすっかり元気だった。癌になる前と全く変わらない感じだ。この状態が、十日程前から続いている。ただ、口からの食事の量は、昔と比べると六割程だ。だけど、シリンジからの食事の注入は、二十一日から少し中断している。それは、もしかしたら口からの食事量が元に戻るかもしれないという期待を込めてのことだ。それと、昨日と十六日には、嘔吐するという事もあった。ただ、吐いた中に食べ物はなく胆汁だけで、吐いた後は、半日程ぐったりしていた。でも、ぺいは、昔から、時折、嘔吐する事があったので、昔からの何らかの問題で嘔吐したのか、それとも、癌の関係で嘔吐したのかは判断がつかなかった。そこで、今回も先生宛てに手紙を書いた。手紙には、嘔吐の他にも色々質問したい事があったので一緒に書いた。そして、手紙は母に持参してもらった。仕事を終えて自宅に戻ると、いつものように手紙の余白部分に先生からの返答が書いてある。前回同様、助手の女性の先生が書いてくれている事が筆跡で分った。びっしりと事細かく書かれていて凄く嬉しかった。

 

まず、一つ目は、嘔吐の事についてだ。嘔吐の原因が、前回のCTスキャンや血液検査の結果から特定出来ないだろうか?という質問を書いていた。先生からの返答は、胃の軽い炎症や胃の動きが悪いことが考えられるけども、CTでは臓器の形は評価出来ても運動機能は評価出来ないという事、そして、嘔吐の頻度が増えたり食べ物を吐くなら内服薬を使うということも考えた方が良いという事が書かれてあった。また、空腹の時間が長いと胃液が溜まって吐くこともありますという事も書かれてある。私は、CTスキャンや血液検査の結果で原因らしき問題がないのであれば、きっと、昔からの嘔吐の再発だろうと思った。ただ、先生の内服薬という言葉が少し気になった。なぜなら、癌を宣告されて以降、口内の炎症を抑える薬などを与えているからだ。もちろん胃薬も一緒に与えてはいるけど、薬が胃に負担を掛けているような気がした。もちろん、放射線治療の負担も重なっているのかもしれない。ただ、そうは言っても、薬も放射線治療も、やめる訳にはいかないので、嘔吐の件は、もう少し様子を見ようと思った。

 

 二つ目の質問は、一回目と二回目のCTスキャンの結果についてだ。肺の白い影の大きさについては、全く変化は見られないということだったので、それであれば、どれくらい安心して良いのか?変化がない場合の癌の可能性について質問していた。これについては、あくまで可能性という前置きの後に、二〇~三〇%と考えていますという事が書かれてあった。私は、この確率が本当に嬉しかった。なぜなら、手術前の検査時点では、肺への転移の可能性が高いという事と、肺へ転移していたら手の施しようがないと聞いていたからだ。とにかく肺の白い影の変化が命運を分けると思っていたので、もしかしたら、このまま口の方の癌さえ克服すれば数年単位で延命させられる。平均寿命まで生かせてやれる。そんな希望が持てたからだ。

 

 三つ目の質問は、一回目のCTスキャンの際、背中にもあった怪しい影は、どうだったのかという事についてだ。これについては、肺の影と同様に全く大きさに変化はないものの、もう少し経過を観察しないと白黒判定は出来ないとの事。それと、背中については、注射歴があれば時々注射の跡がしこりになって白い影として写ってしまうようだ。これについては、そもそも、直感的に背中の影は、しこりだろうと思っていた。それでも、やはり、気になっていたので、まだ完全に白黒がついた訳ではなかったけど少し安心出来た。

 

 次に、四つ目の質問。これは前回の手紙でも質問して様子見になっていた事で、上顎付近に違和感があるようなので、検査で細胞を取った場所は、どこなのかという事と、口の中を見て、口の中に手を突っ込む原因が分からないだろうかという事についてだ。これらについては、まず、細胞をとったのは下顎の縫った場所で、下顎を手術で半分取ったので、上下の歯の噛み合わせがずれて、上顎の真ん中付近に右下顎の奥歯がぶつかっている跡があって、それが原因かもしれませんという説明だった。私は、それが原因に違いないと思った。しかし、どうする事も出来ない。暫く、様子を見ようと思った。なぜなら、まだ少しずつ口の形状が微妙に変化しているように思えたからだ。

 

 次に五つ目の質問。前回の手紙の返答には、四月十日に細胞を採取した検査の結果として、癌細胞が少しいるかもしれないという事が書かれてあった。それで、私は、少しいるかもしれないという言葉の曖昧さが気になり続けていた。そこで、検査した細胞には癌細胞がいなかったけども、深部にいる可能性があるという意味なのか?という事について質問していた。この事に対しては、手術で取った下顎と同じ形の癌細胞はいないけども、正常な口腔粘膜の細胞の並び方ではなくて、配列や構造に乱れがあるという事が書かれてあって、それは、縫ったところに、前癌状態の塊が出てきたか、縫ったところを治すために出てきた傷の修復過程かのいずれからしい。そして、現時点では、どちらも可能性としてあるので、引き続き、放射線治療を続けていきましょうという事が書かれてある。私は、疑わしい細胞にも、万全を期して、放射線治療を行う事によって、下顎の癌の再発が阻止出来るのだろうと思った。

 

 最後に六つ目の質問。それは、前回通院後、癌特有の口臭が、また強まってきたと感じていたから、本当に徐々に癌細胞は縮小しているのか?という事についてだ。これについては、肉眼では癌の再発はないので、放射線障害による口内炎や涎の成分の変化と、涎を上手く飲み込めない事が口内環境変化に繋がっているという事が書かれてあった。私は、正直、この返答には、直感的に少し腑に落ちない感覚を覚えた。だけど、とにかく癌の再発が抑えられる、今は、そう信じるしかないと思った。

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