「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との戦い~

2014年3月 愛猫「ぺい」に、突然、癌が宣告されました。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見て頑張った記録です。
ありのままの事実を、感じた事を全て残しておくことにしました。

七月十一日(金)

 癌で下顎の腐敗が進んでいる。そして、腐敗した細胞は、膿になって血や涎と混ざって口から少しずつ滴り落ちている。それにしても、腐敗が信じられないほどのスピードで進んでいる。手術するまで癌は大きくなる一方だった。先生から手の施しようがないと言われた時、これから先、顔全体が腫瘍で覆われてゆくのかと思っていた。だけど、今度は、腐敗して逆に失われていくというのか?

 口から滴り落ちるものの大半は、母の布のハンカチを三角に折って涎掛けにするというアイデアで、涎掛けが受け皿の役目を果たしてくれるようになった。ただ、付着する量が多いから、一日二回、朝と夜、取り替える必要がある。ちなみに、涎掛けで受けきれなかった涎は、そのまま部屋の至るところに落ちる。床に落ちている場合には、後で拭きとれば良いけど、布団の上に落ちたら後々厄介になる。そういった訳で、五月の後半頃から布団の上には、タオルを敷き詰めるようにしてきた。ただ、腐敗が進むにつれて滴り落ちる量が多くなってきて、タオルを一枚敷き詰めただけでは、その下の布団にまで染みてきそうになった。私は、さらに、二重三重にタオルを敷き詰めて布団に直接染みないようにした。

 ところで、涎などが付着したタオルは、膿の臭いが強烈だ。もしタオルに鼻を近づけたりしようものなら、肺の中の空気を全て吐き出して、胃の中の食べ物も嘔吐してしまいそうになるほど強烈だ。だから、毎日、朝と夜には、洗濯した新しいタオルと交換するようにした。そういった訳で、洗濯は、ほぼ毎日の日課になった。ちなみに、洗濯する事にも苦労が付きまとう。たとえば、強烈な腐敗臭のするタオルの洗濯は、とても他の洗濯物と一緒になんて洗えない。また、洗剤で洗ったぐらいでは臭いが全く消えなかった。私は、洗濯の時間や洗剤の量を増やしてみた。でも、そんな事は全て焼け石に水だった。そして、試行錯誤して、最終的に行き着いた方法が、漂白剤に数時間漬けておいて、その後、洗剤も入れて三十分ほど洗うという方法だ。さすがに、これ以上の方法は思いつかなかった。でも、ここまでやっても、どうしても臭いが残った。だから、ベランダに干していると吐き気のする何とも言えない臭いが周囲に漂った。そして、その臭いが風に乗って部屋に入ってくると思わず吐き気がした。もしかしたら、隣の部屋の住人にも気づかれていたかもしれない。とにかくそんなもんだから、洗濯物を乾かす時には、窓を閉めて、さらに、どうしても普通の洗濯物と一緒に干す事になる場合には、ベランダの端と端、腐敗臭のするタオル類と、最大限干す場所を離して、臭いが極力移らないようにした。それでも、臭う部屋の中で干すよりは良かった。

 それはそうと、この日、郵便受けに水道使用量の検針票が入っていた。使用量を見ると、通常の二倍以上になっている。そして、漏水などが発生していないかという注意を促す書面も投函されていた。このところ相当水を使用していた感覚があったから覚悟はしていた。しかし、二倍以上とは凄い水を使ったなと思った。しかし、こればっかりは仕方がない。