「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

八月四日(月)

以前にも増して舌の状況が悪化している。下顎がなくなった関係で舌を思ったように動かせなくて辛そうだ。喉も渇いて辛いだろう。癌で手術するまでは、水を飲む時、お風呂場の水道の蛇口に舌をつけて飲んでいる事が多かった。でも、今は、その蛇口に舌をつける事すら叶わない。もう、蛇口の近くにさえ行かなくなった。他に喉を潤す方法としては、水が入った器から飲むという方法がある。でも、舌を動かせないから飲めない。もし、水面に舌がついたとしても、水を喉にまで運べない。喉が渇いても水を飲めない。今、それが癌の痛みと合わさっている状態。想像するだけでも辛い。そこで、食事を注入した後に胃瘻チューブから入れる水の量は多めにしている。ただ、幾ら胃の中に水を入れてみても、喉の渇き自体は癒されないはずだ。私は、シリンジを使って水を上顎に吹きつけてみようと思った。霧吹きで吹きつけるという方法も考えたけど、もし、噴霧した霧が肺の器官の方に入ってしまうと、何か予期しない事が起きそうな気もしたので、万全を期してシリンジで吹きつける事にした。でも、シリンジは、水の出口が狭いからピュッと勢いよく水が出てしまう。だから、弱すぎず強すぎずの力加減で水を吹きつけるようにした。また、上顎に吹きつける時、もし、喉に近い方に吹きつけてしまうと、水が喉に直接流れ込む可能性がある。だから、口元の上顎部分をめがけて吹きつけてみる事にした。それで、実際に吹きつけてみる。ぺいは、不意の水に驚いている。上顎に水を吹きつけられる感覚なんて初めてだから、それ自体も驚く原因だったと思うし、もしかしたら、乾燥して荒れていた皮膚に水が浸みて痛かったのかもしれない。でも、今回だけではなく、これからも継続してゆけば、驚くという事も少なくなるだろうし、浸みて痛いという度合いも、軽減してゆくだろうと思った。

 

それと、この頃、常々感じる事がある。もし、私自身が、ぺいと同じように下顎を全部失って、舌や上顎が全て直接外気に触れる状態になってしまったらどうだろうかという事だ。そして、舌の根元まで腐敗が進んできたらどうだろうか?唾を飲み込みたくても無理。水を飲む事も叶わない。正直、気が狂いそうになると思う。そして、それは、はっきり言って生き地獄。癌の進行が目に見える場所だけに、ぺいの苦しみが、自分の事のように思えて、なおさら辛い。そういえば、ぺいの介抱は大変だけど全く苦労とは思わない。逆に介抱する事に喜びさえ感じる。ぺいの命が繋がるのであれば、ぺいが喜ぶ事であれば何だってする。お金だって幾ら費やしたって構わない。そんな気持ちでいる。だからこそ、私は、ぺいに何度となく伝えている。「お前の為だったら何でもするからな」「ぺい、みんな(私や母やお医者様)頑張ったんだから、ぺいちゃんも頑張れ」「もう、ぺいちゃんが頑張るしかないんだからな」「ぺい、癌なんか、やっつけちゃえ」と。