「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

八月五日(火)

既に下顎は腐敗で全て失われている。そして、一時止まったかのように思っていた腐敗は、いよいよ喉にまで達してきた。首には、大きな血管がある。もし、これから先、動脈に癌が達して血管が破れてしまったら大量出血するのではないだろうか?どれほど猫に血液があるのか分らないけど、もし、大量に出血して階下の部屋の天井に血液が浸みたりしたら大変な事になってしまう。私は、病院に電話して先生に質問してみる事にした。久しぶりに電話すると、電話口の先の声は、助手の先生だった。そこで、先生に質問しようと思っていた事を、そのまま助手の先生に伝えることにした。「あの~、下顎が全部なくなったのに、まだ生きてるんですけど、これから先、喉の動脈なんかに癌が到達したら大量出血したりするんでしょうか?」すると先生は、「じわじわ出血することはあっても、いきなり大量に出血することはありませんので・・・」という事を話してくれた。私は、いきなり大量出血しないという説明に少しホッとした。実は、この時、あえて質問の前半部分で、「下顎が全部なくなったのに、まだ生きてるんですけど・・・」という前置きをした。それは、最後の通院の日、先生から、「もう既に手の打ちようがない」「もし、手を打つとしたら下顎全体を全部取るしかない」「でも、そうすると生きていられない」という説明を受けていたからだ。でも、今、現実に下顎の全てを失っても生きている。私は、そんな事だったら、もしあの時、最初から下顎を全摘出していれば、少なからず命は助かったのではないか?という思いもあったからだ。でも、その事だけを取り上げて質問しても仕方がないので、表面上は、前置きで今の状態の説明を伝えてみて、もし、先生の方から、下顎が全部なくても生きている事について、何か話が聞けたら良いなと思っていたのだ。でも、もし、仮に最後の通院の日に、下顎を全部取れば、延命出来ると言われていたとしても凄く悩んだだろう。なぜなら、命は助かっても、ぺいに酷く辛い生き地獄のような日々を強いる選択になるからだ。さすがに、そんな選択は、私のエゴ以外の何者でもない。だから、今、例え下顎を全て失って生きているとしても、下顎の全摘出という決断は到底無理だったように思う。