「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

八月七日(木)

今日もぺいとスキンシップ。退院以降、特別に始めたスキンシップは、毎日、大体、夜の十二時前後から三十分程というのが日課になっている。私は、今日も、いつものように、ぺいの名前をやさしく呼びながら首周りや体を撫でてやった。すると、尻尾を振ってくれている。痛くて辛いだろうに。そう思えば、なおさら愛おしく思えてくる。そう思った時、頬に一瞬手を当てて痒そうな素振りをした。もし、癌で下顎が失われてなければ、頬が痒ければ脚を使って掻く事が出来るだろう。でも、今の状態で、そんな事をしたら自分の舌を足の爪で引っ掻いてしまう。きっと、それで手で何とかしようとしたのだろう。だけど、人間みたいに猫は手で頬を掻く事なんて出来ない。今のぺいは、自分自身で痒いと思った場所を自由に掻くことすら出来ないのだ。私は、痒そうな場所を代わりに掻いてやることにした。まずは、ティシュに軽く水を染みこませて、痒そうにした部分を拭きながら掻いてやった。水を染みこませたティシュで掻いたのは、一石二鳥で掻きながら頬の汚れを落とすためだ。痒みの原因は、皮膚の汚れだろうから、その場しのぎで、痒さだけを取り除いてやるのではなくて、少しでも痒みを感じさせないようにしたかったからだ。それで、私がティッシュで掻いていると、顔を掻いている側に強く傾けてきた。凄く気持ち良さそうにしている。ずっと、痒いのを我慢していたんだな。ぺい、痒かったんだな。そうかそうか、これで大丈夫だな。そんな事を心の中で何度も思った。一通り掻いて綺麗にし終わった後、私は、ぺいの身体に顔をくっつけてぺいを抱きしめてやった。いつまでも一緒にいたい。離れたくない。今日という日は、ぺいが喜んでくれて本当に良かった。時間というものは、かけがえのない一瞬一瞬が繋がって作られてゆく。決して、繰り返される事のない時間の流れ。そんな事を痛切に意識してしまう。