「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との戦い~

2014年3月 愛猫「ぺい」に、突然、癌が宣告されました。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見て頑張った記録です。
ありのままの事実を、感じた事を全て残しておくことにしました。

八月十二日(火)

 夜、洗濯をしようと思った。実は、洗濯機は昔ながらの二槽式を使っている。単に壊れないから二十五年ぐらい使い続けているのだけど、二槽式の洗濯機は、簡単に洗濯漕の中に水だけを溜めた状態に出来る。この日、私は、洗濯機をそんな状態にしてパソコンに向かっていた。すると、突然、「バシャ!」という水の音が洗濯機の方から聞こえた。私は、あっ!と思った。そして、直ぐに洗濯機のある場所に走った。やっぱり、ぺいが洗濯漕の中に落ちている。こんな事、初めてだ。ぺいは無我夢中で、水の中から脱出しようとしている。でも、体力が落ちているから力が弱くて脱出出来そうにない。私は、急いでぺいを水の中から引き揚げた。もし、普通の健康な状態であれば、水を溜めた洗濯漕に落ちても何も問題なく自力で脱出出来るだろう。しかし、今のぺいは、自力での脱出は、到底無理だったように思う。それは、体力が落ちている事は勿論だけど、下顎がなくて口が開いたままの状態になっているからだ。この状態だと、少しでも体が水に沈みこむと喉に水が容赦なく流れ込む。舌だって動かせない。だから、もし少しでも助けるのが遅かったら本当に危なかった。

  それにしても、このところ、ぺいは、とにかく水という水に引き寄せられていた。きっと、癌に冒されている部位が熱いからなのだろう。ことさら最近は、洗濯漕の中に溜めた水に手を入れて遊んでいたりもしていた。だから、洗濯漕に水を溜めた時には、必ず蓋をするように注意をしてきた。ただ、この時に限っては、ぺいも洗濯機の近くにいなかったし、溜めているのは洗剤を入れてない真水だからと思って、つい少しの時間であれば大丈夫だろうと考えてしまっていたのだ。

  そう言えば、普通、猫は、水に濡れれば、身体や頭を振って水を弾き飛ばす。でも、ぺいには、もう、とてもそんな元気もない。もちろん舌も動かせないから濡れた毛の毛繕いも出来ない。濡れた身体をタオルで拭いてやった。もし、元気であれば、拭いている時には逃げ出そうとする。でも今は、ただ、私に濡れた身体を成すがまま拭かれるだけ。しかし、本当に申し訳なかった。もっと注意していればと思った。でも、ぺいは、私が一目散に駆けつけて助けてくれたという事を、しっかり認識してくれていて、その事を凄く心地よく感じてくれているように思える。私は、目には見えないけど、何となくだけど、心のどこかで確実に感じられる魂の繋がりが嬉しかった。私とぺいの絆は、ぺいの容態が悪い時こそ、どんどん深く強くなってゆく。健康な時はもちろんだけど、容態が悪い時にこそ精一杯の愛で包んであげる。私は、そんな気持ちで接している。それを少しでも心地よく感じてくれたら嬉しい。生きていた時の記憶として、そんな思い出を刻んでくれると嬉しい。ただ長い間、一緒に暮らしてきただけではなかったのだと、私は、あらためて思った。