「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

八月十二日(火)

夜、洗濯をした。洗濯機は昔ながらの二槽式を使っている。単に壊れないから二十五年ぐらい使い続けているけど、二槽式の洗濯機は、簡単に洗濯漕の中に水だけ溜めた状態に出来る。この日、洗濯機をそんな状態にしてパソコンに向かっていた。すると、突然、「バシャ!」という水の音が洗濯機の方から聞こえてきた。あっ!と思った。直ぐ洗濯機のある場所に走った。やっぱり、ぺいが洗濯漕の中に落ちている。こんな事は初めてだ。ぺいは無我夢中で、水の中から脱出しようとしている。でも、体力が落ちているから自力で脱出なんて出来る訳がない。私は、瞬時にぺいを水の中から引き揚げた。今のぺいは、下顎がなくて口が開いたままの状態になっている。この状態だと、少しでも体が水に沈みこむと喉に水が容赦なく流れ込む。舌だって動かせない。だから、もし少しでも助けるのが遅かったら本当に危なかった。

 

それにしても、このところ、ぺいは、とにかく水という水に引き寄せられている。多分、癌に冒されている部位が熱いからなのだろう。ことさら最近は、洗濯漕の中に溜めた水に手を入れる事が目立ち始めていた。だから、洗濯漕に水を溜めた時には、必ず蓋をするように注意をしていた。だけど、この時に限っては、ぺいは洗濯機の近くにいなかったし、溜めているのは洗剤を入れてない真水だと思って、つい少しの時間であれば大丈夫だろうと思ってしまったのだ。それと、普通、猫は、水に濡れれば、身体や頭を振って水を弾き飛ばす。でも、ぺいには、もう、とてもそんな元気すらない。当然、舌も動かせないから濡れた毛の毛繕いも出来ない。そういった理由もあって、その後、濡れた身体をタオルで拭いてやったのだけど、もし、元気な時であれば、拭いていると逃げ出そうとする。でも今は、ただ、私に濡れた身体を成すがまま拭かれるだけ。それにしても、本当に申し訳なかった。もっと注意していればと思った。でも、ぺいは、私が一目散に駆けつけて助けてくれた事を、しっかりと認識してくれていて、気のせいか、その事を凄く心地よく感じてくれているように思えた。私は、目には見えないけど、何となくだけど、心のどこかで確実に感じられる魂の繋がりのようなものが嬉しかった。私とぺいの絆は、ぺいの容態が悪くなってから、益々、強くなっている。健康な時はもちろんだけど、容態が悪い時にこそ精一杯の愛で包んであげる。この数か月、そんな気持ちで接してきた。それを、少しでも心地良く感じてくれているなら嬉しい。そして、十数年という間、一緒に暮らしてきただけではなかったのだと、愛に包まれたのだという事を生きていた時の記憶として刻んでくれると嬉しい。