「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との戦い~

2014年3月 愛猫「ぺい」に、突然、癌が宣告されました。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見て頑張った記録です。
ありのままの事実を、感じた事を全て残しておくことにしました。

月命日

あれから一か月が経った。大切な月命日は、秋分の日で祝日という巡り合せ。これも偶然なのだろうか?とにかく、仕事は休日で休みなので、一日中、ぺいの事だけを考えて過ごせるという事が本当に凄く嬉しかった。まずは、朝、花屋さんが開店する時間を待った。そして、十時を回ったので、早速、出掛ける事にした。今日は、特別な日。そうだ!ぺいに美味しいものを食べさせてやりたい。出掛け際、そう思った。ぺいは、どんな物を買って帰ると一番喜んでくれるかな?自転車を走らせながら考えた。やっぱり、一番のご馳走は刺身だよな・・・。そう思った途端、刺身を喜んで目の色を変えながら食べてくれる姿が頭に浮かんだ。そこで、花やの前に鮮魚店に立ち寄る事にした。そして、目的の刺身を手にして、会計でレジに並んだ時、ぺいが喜んでくれる、そう思うと凄く嬉しかった。そうして、鮮魚店で刺身を買って、次に、本来の目的であった花屋に向けて自転車を走らせた。それで、花屋では、月命日という日は、大好きだったぺいの特別な日なので、その事をイメージしながら生花を選んだ。自宅に戻って花を花瓶に挿していると母が到着した。今日は、昼頃に来るという連絡をもらっていたから予定通りだ。母も何か持ってきてくれたようで、それは、いつもの軽く湯通しした肉と、なぜか、おはぎだった。ちなみに、おはぎは、お供え物で、今日、ぺいの事を偲んだ後に、私と一緒に食べようと思って買ってきたそうだ。私は、早速、偲ぶためのセッティングを始める事にした。まず、ぺいが旅立った場所に骨壺を置いた。そして、その横にぺいの写っている写真立て、それらの後ろに生花を挿した花瓶、骨壺の前には、仏具と母が持ってきてくれた肉とおはぎ、それと、初七日に買っていたカニカマと、今日買ってきた刺身を置いた。これで、全ての準備が完了した。

 

ぺいが危篤になった時間は、十三時。旅立った時間は、十三時半だった。だから、十三時になったと同時にロウソクと線香に火を点けて、母と一緒に目を閉じて骨壺に向かって手を合わせた。これから十三時半までの三十分という時間は、ちょうど今から一か月前、ぺいが、もがき苦しんでいた時間になる。あの時の記憶が鮮明に蘇ってくる。私は、そうして三十分、殆ど無口で、ロウソクや線香が次第に短くなるのを時折見つめながら過ごした。もちろん、母も口数が少なかった。そして、一本目のロウソクが燃えて終わった。時計を見て見ると、まだ、ぺいが旅立った時刻にはなっていない。私は、ロウソクの二本目に火を点けた。そして、二本目のロウソクが燃え尽きた。再び、時計を見てみると、十三時半を秒針が少し過ぎたところだった。それは、あの紛れもなくぺいが旅立った時刻と偶然にも一緒だった。あまりにもピッタリだ。またしても、何か神様の見えない力が働いているような気がした。私は、直ぐに新しいロウソクを用意して、また急いで火を点けた。今度は、三本目のロウソクという事になる。でも、もう既にぺいが旅立った時間を過ぎた。そもそも、ロウソクは、ぺいが旅立った時刻までの予定だった。だから、本当は、三本目のロウソクになんて火を点ける必要はない。だけど、ロウソクの火が偶然なのか、ぺいが旅立った時刻とピッタリに消えた事が、どうしても気になった。それは、ぺいの命の燈火と、ロウソクの燈火がダブっているように感じてしまったからだ。そして、その偶然を、どうしても素直に受け入れる事が出来なかった。せめて、ロウソクの燈火ぐらいは、現実と違っていてほしい。だから、私は、衝動的に三本目のロウソクに火を点けていた。ロウソクに火を点けたところで、ぺいは生き返らない。勝手にぺいの死とロウソクの炎をオーバーラップさせた悪あがき。火を点ける時、そんな事も思った。でも、思わず火を点けた。それだけ、ぺいに死んでほしくなかった。ただ、もし、このまま、現実を直視せず、ぺいの死というものを受け入れないでいたら、ぺいは、死んだというのに、これから先も、死んだという事を認められずに過ごす事になってしまう。もし、そうだとしたら、きっと、ぺいは、死んだというのに死にきれずに浮かばれないのではないだろうか?私は、ぺいの事が大好きだから、とにかく、ぺいが一番幸せになれるようにしたい。それが、何よりも第一優先だ。そして、それこそが、私の一番の幸せでもある。そう思った途端、衝動的に火を点けてしまった理由を何か別の理由にしなければならないと思った。そうだ!これは(三本目のロウソクは)、ぺいが天国という場所で新たなスタートを切る意味の燈火にしよう!天国では、また幸せに元気で暮らせよ!私は、新しく明るく燃える炎を見ながら、あらためて手を合わせた。そして、三本目のロウソクも消えていった。これで、月命日という日は、特別な日は、ぺいの事を偲んで、そして、天国での幸せも願う事が出来た。きっと、ぺいも喜んでくれたはずだ。ぺいが尻尾を左右に振ってくれている。そんな姿が頭に思い浮かんだ。良かった。本当に良かった。嬉しいよ!ぺい。

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