「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との戦い~

2014年3月 愛猫「ぺい」に、突然、癌が宣告されました。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見て頑張った記録です。
ありのままの事実を、感じた事を全て残しておくことにしました。

引っ越し

 あの日から二か月。トイレの砂、食器、爪研ぎ・・・、ぺいが使っていたものは、何一つとして動かさないでいた。それは、一つ一つ、全ての物が、ぺいの一部のような気がして、ずっと、このままにしておこうと思ったからだ。もちろん、それらを目にすると、寂しさを感じる事もあった。でも、もしかしたら、ぺいの魂は、まだ、この部屋の中にいるかもしれない。もし、そうだとしたら、何か一つでも片付けてしまうと悲しませてしまう。そんな事も考えて、そのままにしてきた。

 ところで、ずっと、ぺいと一緒に暮らしてきた部屋は、もう入居してから十四年。随分前から経年劣化が目立つようになった。それと、ここに引っ越してきた当時は、駅から近い割には静かな環境だったのに、今では、深夜の時間帯が一番騒がしいという環境になった。そう言った訳で、数年前、真剣に引っ越しを考えた。でも、残念ながら、犬とならまだしも猫と一緒に暮らせる賃貸物件というのは本当に少ない。もし見つけても、駅から遠い場所だったり、築年数が相当古かったりしたので諦めた。でも、もうぺいはいない。だから、直ぐにだって引っ越すのは可能なのに一ヶ月程前から悩んできた。それは他でもない。ぺいと長年暮らしてきて思い出の詰まった部屋から出てゆく事に未練があったからだ。ただ、他にも理由はあった。それは、もしかしたら、ぺいの魂は、この世にいるかもしれない、そうすれば、この部屋に戻ってくるかもしれない。もし、その時、自分がいなければ困惑するだろう。そんな事も気になったからだ。そもそも、猫は、住み慣れた場所にいた方が心地良いに決まっている。それなのに、引っ越しで遺骨を移動させてしまったら負担を感じさせてしまう。そんな事も思った。そうして色々考えていると、今、別に無理に引っ越さなくたって、また一年後ぐらいに考えれば良いかな・・・とも思えた。ただ、その一方で、今住んでいる部屋の契約更新まで、あと残り八か月という事もあったし、新年は、半ば強引にでも新しい場所で新たな気持ちで迎えた方が良い気もした。本当に色々考えた。そうして、最終的には、年内に引っ越そうと決めた。

 そう決めたからには、早速、新しい物件探しと、部屋の中の整理を行わなければならない。 まずは、そのままにしていたものの一つで、一番片付けの大変なトイレに手をつける事にした。まだ、猫砂も入ったままだ。そこで、猫砂をすくって袋に詰める事にした。すると、突然、砂の中から、一・五センチぐらいのウンチが一つ出てきた。たまたま、回収しきれずに残っていたようだ。もう、随分、月日が経っているから乾燥して固くなっている。そういえば、ぺいが元気な時には、ウンチは、元気のバロメーターだと思えて嬉しかった。でも、今となっては、ぺいの一部に思えて愛おしさすら感じる。どうしよう?いつものように捨ててしまおうか?でも、もし、このまま捨ててしまったとしたら二度と取り返しがつかない。そこで、ウンチは、ラップに包んで、仏壇の引き出しの中に保管した。そうして、引き続き別の場所を整理していると、今度は、ぺいが元気な頃、良く寝て過ごした寝床に抜け毛を見つけた。この寝床は、クローゼットの奥にある高い場所だ。だから、日頃、目につかないから、特に掃除なんてしていなかった場所だ。猫は本当に良く毛が抜ける。そんな抜け毛は、服にも纏わりつくから無用の長物だった。でも、そんな毛だって、今では、ぺいの貴重な一部に思える。そして、本当に愛おしい。そっと、見つけた抜け毛に触ってみた。この感触。もう二度と触れる事なんてないと思っていた。昔、ぺいを撫でていた時、手に感じていたあの感覚。本当に懐かしい。もう二度と感じる事なんてないと思っていた。それは、ぺいが突然、この世に戻ってきてくれて出会えたような感覚だった。そうだ!この毛さえ保管しておけば、いつでも、大好きだったぺいに触れる事が出来る。あの頃に戻る事が出来る。あれほど無用の長物だと思っていた抜け毛なのに、今は、その毛に触れられるという事が、本当に心の底から凄く嬉しい。でも、考えてみれば、そもそも、こんなに嬉しく思えるって事自体、ぺいに感謝すべき事なんだと思う。そして、一回きりの人生において、そのように思える存在に出会えたという事自体、凄く幸せな事なんだと思う。ぺいありがとう!ありがとうな!この毛も絶対に残しておく。直ぐにそう心に決めた。そして、毛を出来る限り沢山かき集めた。この毛は、ぺいそのもの。ぺいの分身でもある。私にとって、唯一無二の一番の宝物になる。何か抜け毛を入れられる良い入れ物はないかな?ちょうど良い感じの小さな透明のケースを部屋の中に見つけた。これは、何の入れ物だったっけな?全然思い出せない。でも、毛を入れるには、ちょうど良い感じだ。その見つけたケースの中に毛を詰めた。そして、その毛の詰まったケースも、ウンチと同じように仏壇の引き出しの中に納めた。

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 部屋の整理を始めて数日。だいだい整理が終わった。それにしても、思っていた以上に、ぺいに関するものが多かった。爪研ぎ板や、一緒に遊んだおもちゃ、その他色々。もう、ぺいはいなくなったから全部不要といえば不要だ。だけど、ぺいが使っていたものだと思うと、何一つとして捨てる気になんてなれない。そこで、どんなに細かいものでも、引っ越し用の大きな箱に詰めて、引っ越し先に全部持って行く事にした。ただ、トイレは大きくて同じ箱には入りきらなかった。だけど、別の箱に入れて一緒に持って行く事にした。 

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