「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

ぺいとの楽しい生活

そうして、再び電車に乗って自宅に戻った。でも、今度は、元気な子猫と一緒だ。早速、猫の名前を考える事にした。子猫は雄。別に雄雌かどうかには拘らなかった。う~ん、「ニャー王」そうだ!「ニャー王」にしよう。猫の王様、我が家の王様、猫の鳴き声と同じだしセンスも良いと思った。でも、暫く日数が経過して思った。それは、名前がカッコ良すぎて何だか違和感を感じずにはいられなかったからだ。それと、そもそも「ニャー王」と部屋で声を出していたら、私が猫のような気がしてくるではないか。後は、ペット禁止なのに、「ニャー王」なんて呼んでいて、その声が、お隣さんに聞こえたら精神的に可笑しくなったと思われるか、猫を飼っている事がバレバレだ。冷静に考えてみると、凄く間抜けな名前に他ならない。そう思った途端、早く名前を変えなければと思った。うむむ、どうしよう。猫とバレない名前で良い名前はないか・・・。あっ、そうだ!「ぺい」にしよう。「ぺい」というフレーズは、特に何の脈絡もない思い付きだった。そして、その後、友達に名前を報告したら、「ぺいって、支払うって意味でしょ?変な名前(笑)」なんて言われたりもした。でも、英語の意味なんて不思議と全然気にならなかった。結局、「ニャー王」と呼んでいたのは、一緒に暮らし始めて三か月程の間だけだった。

 

ぺいは、血統書を見ると、二〇〇三年二月十日生まれだ。私と出会ったのが、同年四月二十七日だったので、生後、二か月と十七日目に出会った事になる。出会った時は、本当に小さくて手のひらに乗せて片手で軽々と持ち上げる事が出来た。だから、私は寝るとき、ぺいを自分の寝室とは別の部屋に隔離して寝るようにした。なぜなら、私が寝返った時、寝ているぺいを潰してしまったり、足で蹴飛ばしてしまったら、ぺいの命に関わると思ったからだ。ぺいは、隔離されている間、本当に凄く寂しそうだった。でも、体がある程度大きくなるまでは、お互いに我慢するしかない。そう自分に言い聞かせた。そして、そんな日々が暫く続いて、二か月ほど経った頃だったと思う。子猫の成長スピードには、目を見張るものがあった。まさに、体に取り込んだ食料の全てが身体を大きくさせていると思えるような成長ぶりだった。こんなに早く一緒に寝られる日が訪れるとは思っていなかった。そして、隔離を解禁した。もちろん、自分が寝ているベッドと同じベッドの上に猫が寝ていると、とても寝づらいし、正直、その後は、熟睡なんて出来なくなった。でも、それ以上に猫と一緒に寝られるという事の方が嬉しくて、また、数十年間、我慢してきた猫と一緒に寝るという夢が叶ったと思うと、本当に感無量以外の何物でもなかった。

 

ところで、掛布団には楽しい思い出がある。それは、天気の良い日に布団を干したら、ふわふわして気持ちいい状態になる。そんな布団を部屋に取り込むと、ぺいは、一目散に布団の上に飛び乗って、いつも気持ち良さそうに走り回った。ふわふわした布団は、猫も気持ち良いのだろう。その他にも、布団のシーツを洗って、シーツの中に布団を入れようとすると、今度は、そのシーツと布団の隙間に飛び込んできて、その中を楽しそうに眼を丸くして無邪気に走り回った。はっきり言って邪魔なんだけど・・・。もう、なんだかやってる事が、人間の子供と変わらない。猫だって人間と同じ。姿形は違うけど、言葉は喋れないけど、ただ、それだけの違い。本当にぺいの喜びが、私の喜びであり、それらが凄く幸せに思えた。

 

 でも、もちろん楽しい事ばかりでもなかった。人にも性格があるように、猫にも性格がある。ぺいは、結構小さい頃から、夜、もっと餌が食べたいのに、私が寝ようと布団に向かった途端、度々、噛みついてくるようなった。そして、九歳ぐらいになると、飛び掛かってきて本気で噛みついてくるようになった。でも、こういう時は、ぺいが後方から向かってくるのが、私には気配で分かった。だから、私は、飛びついてきたぺいを闘牛士のようにかわして布団に押し付け、お仕置きのつもりで、ぺいの前の両脚を持って五秒ほど布団に張り付け状態にした後(私なりの愛情表現)、結局、直ぐに頭をなでなでして、結局、餌を追加した。それにしても、こんな凶暴な性格は、正直、本当に勘弁してほしいと何度も思った。ただ、私は、やっぱり生き物なんだから、良いところばかりではない、悪いところもあるから愛おしいのだと心境は次第に変化した。本当の愛おしさとは、人に対しても猫に対しても、悪いと感じる部分があってこそ、初めて生まれるのだと思った。生き物なのだから心があるのだから、お互いに良いと思う部分もあれば悪いと思う部分だってある。お互いが完璧でないからこそ、そこから、親しみや情が生まれるに違いない。かわいいから愛おしいに。私が、ぺいを思う気持ちは、年月を重ねるごとに益々深くなっていった。

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