「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

2015-01-01から1年間の記事一覧

八月六日(水)

私の家は、ペット禁止の賃貸マンションであり、猫が人目に触れると拙い。だから、過去の話ではあるけども、ぺいと暮らし始めてからの数年間は、部屋の外には一切出さないようにしてきた。でも、ぺいは、部屋の網戸の内側から外の様子を度々眺めていた。そし…

八月五日(火)

既に下顎は腐敗で全て失われている。そして、一時止まったかのように思っていた腐敗は、いよいよ喉にまで達してきた。首には、大きな血管がある。もし、これから先、動脈に癌が達して血管が破れてしまったら大量出血するのではないだろうか?どれほど猫に血…

八月四日(月)

以前にも増して舌の状況が悪化している。下顎がなくなった関係で舌を思ったように動かせなくて辛そうだ。喉も渇いて辛いだろう。癌で手術するまでは、水を飲む時、お風呂場の水道の蛇口に舌をつけて飲んでいる事が多かった。でも、今は、その蛇口に舌をつけ…

八月三日(日)

もう季節は完全に夏。そういえば、八月に入った頃から、あれほど臭っていた腐敗臭が急に消えている。それで、ぺいの様子を見てみる。下顎は完全になくなっている。そして、癌による腐敗は、ほぼ、喉にまで達している。私は、もしかしたら、下顎の組織と喉の…

八月二日(土)

母が再び蝉を捕まえてきた。でも、今日のぺいは、全く興味を示さない。そうこうしているうち、母は、ぺいが歩いている時、蝉をぺいの背中の上に乗せた。折角、捕まえてきた訳だし、そうすれば、少しぐらい蝉の相手をすると思ったに違いない。それで、その蝉…

八月一日(金)

本当に無情だ。日に日に下顎の腐敗が進んで、ほとんど喉にまで達している。もし、このまま腐敗が止まらなかったら舌が根本から抜けてしまうのか?もし、舌が抜けたとしたら生きてゆけるのか?舌がなくなったら気道に湿りっ気のない空気がストレートに入って…

七月二十八日(月)

癌の浸潤が影響しているのだろうか?目ヤニ以外にも、鼻の穴にも汚れた鼻水が固まって黒い瘡蓋が出来ている。黒い目ヤニと、鼻の穴の黒い瘡蓋。そしてもう、既に下顎は完全になくなって、舌は下向きに反り返って、完全に外気に触れている。本当に酷い状態で…

七月二十七日(日)

また、母が蝉を捕まえてきた。今年は、我が家に来るたび大体捕まえてくる。それにしても、今日、捕まえてきた蝉は、特に元気が良い。ただ、ついこの前までは、あれだけ目の色を変えて無邪気に遊んでいたのに、今日は遊ぶ時間が極端に少なかった。二、三回だ…

七月二十六日(土)

ついに、下顎の左側は、全て腐敗で消失してしまった。右側は、左側に比べれば進行は遅いけど八割ほど消失している。それと、ぺいが寝ているときに口の中を見てみると、右側に何か白い棒状のものが突き出ている事が分った。いったいなんだろう?パッと見ただ…

七月二十一日(月)

ぺいが食事をする場所には、姿見用の鏡が置いてある。だから、食事をする時、鏡に映るのは自分の姿だという事も、鏡に映るのは、自分の後方の景色だという事も良く分っている。だから、鏡越しに私の様子を観察するという事も良くあった。ぺいは、今、癌にな…

七月二十日(日)

今日は、ぺいとずっと一緒に過ごせる日。休日だ。そんな訳で、自宅にいると母がやって来た。母は、ぺいの事が気になるようで、ぺいの退院後も、だいたい週に二回、様子を見に来るようになった。ところで、数年前の事になるけど、母が、蝉を捕まえてきた時、…

七月十七日(木)

寝るとき以外の時間、窓を常に開けっ放しにしていると、蛾とハエが入ってくるようになった。蛾は、日常生活では全く見かけなかったから、初めて蛾が部屋の中に入ってきた時は、一体どこから?と思った。ちなみに最初に部屋の中に入ってきたのは蛾の方だった…

七月十五日(火)

猫は、頭が水に濡れた時、自分自身の頭をブルンブルンと振り回して水気を振り払うけど、最近、それと同じように涎を振り払うようになった。涎には粘性があって、下に落ちる時、ツーっと長くなる。それが、鬱陶しいのだろう。でも、ブルンブルンという動作を…

七月十三日(日)

我が家には、以前から空気清浄器が二台あって、それらを二十四時間、作動させている。それでも、下顎の腐敗が進むにつれて、何とも言い難い臭いが部屋中に充満してきた。私は、設置型の大きい消臭剤を四つ買ってきて、部屋の中に万遍なく置いた。もちろん、…

七月十二日(土)

ついに下顎は、先端から六割ほどが腐敗してなくなってしまった。歯が抜け落ちたのが、六月の二十二日だった。まだ、あれからたったの二十日しか経っていない。それなのに六割もの顎の肉が既に腐敗してなくなってしまっている。あまりにも早い。早すぎる。舌…

七月十一日(金)

下顎の腐敗が進んでいる。そして、腐敗した細胞は、膿になり血や涎と混ざって口から少しずつ滴り落ちている。それにしても、腐敗が信じられないほどのスピードで進んでいる。手術するまでの間、癌は大きくなる一方だった。そして、先生から手の施しようがな…

七月十日(木)

仕事から帰宅してぺいの顔を見ると、左目から何やら汚れたような涙が出ている。ティシュで拭き取ってみると、案の定、ティッシュが少し黒く汚れた。涙自体が汚れている。一体何なんだ?その目の周囲には、汚れた涙が固まって目ヤニになっている。それは、癌…

七月九日(水)

なぜか急にトイレの回数が多くなっている。普段と比べると十倍近い。でも、回数が多い分、一度に出る糞尿の量は十分の一程度。便は軟便気味だ。癌が本格的に痛みだして、少しの便意や尿意に耐える余裕さえなくなってきたのだろうか?原因が、さっぱり分から…

七月二日(水)

どれくらい昔からだったろうか?気がつけばという感じだったので、いつの頃からかは、正確には分からないけど、ぺいは、毎日、お湯の入っていない空のバスタブの中で過ごす事があった。バスタブの中で別に寝る訳ではない。おそらく、狭くてヒンヤリしている…

七月一日(火)

この日も私が寝ようと準備を始めると、ぺいは、昨日と同じ足元側のベッドの端で寝始めた。寝る場所、変えたのかな?ずっと、一緒に寝てきたのに・・・。本当なら私と一緒に寝たいはずなのに・・・。私の顔の近くで寝ると迷惑を掛けるという事に、気付いたよ…

六月三十日(月)

今夜も、我慢して寝るしかない。そう思いながら布団に入った。ぺいは、いつもと同じように枕元で寝始めている。私は、昨日と同じようにマスクを二重にして、ぺいに背を向けて寝る事にした。それにしても臭い。これは、耐え難き臭さ。本当に困った。どうしょ…

六月二十九日(日)

昨日から始めたマスク。今日もマスクをして寝る事にした。でも、ぺいからの臭いが、さらに強烈になってきた。昨日は、効果のあったマスクなのに、今夜は、殆ど効果がない。マスクで防げたのは、たったの一晩だけ。そんなのあり得ないと思った。だけど、それ…

六月二十八日(土)

日中、夜、どうすれば臭いに悩まされずに眠れるのか考えていた。それで、ある事を思いついた。それは、マスクをして寝れば問題ないのではという閃きだった。そもそも、こんな簡単な事、どうしてもっと早く思いつかなかったのか?早速、マスクをして寝てみる…

六月二十七日(金)

今日も寝る時刻になった。既にぺいは、いつもの場所であるベッドの上の枕元に陣取って寝始めている。前にも書いたけど、私が寝ようと思って準備を始めたら、ぺいも寝る準備を始める。それにしても、腐敗臭は強まるばかりで、本当に強烈な臭いだ。でも、ぺい…

六月二十六日(木)

そういえば、ぺいは寝る時、いつも枕元で寝るようになったけど、ちなみに、寝る時の私の顔の位置と、ぺいの顔の位置は、せいぜい離れても三十センチぐらいだ。だから、最近、寝ていると、ぺいから漂ってくる腐敗臭に鼻を突かれる事が急に多くなってきた。本…

六月二十四日(火)

仕事を終えて帰宅すると少し腐敗臭がした。あらためてぺいの口を見てみる。すると、下顎の歯の抜けたあたりの顎の肉が少しなくなっているように見えた。なんとなく顎の先端から五ミリぐらいだろうか?二日前には、歯が抜けただけで、あの時には、その他に感…

六月二十二日(日)

夜、ぺいは、いつものようにベッドの上で寝ている。そして、二十一時を過ぎた頃、すくっと起き上ってベッドの上から下りた。すると、寝ていた場所に何か見慣れないものが落ちている。一体、何だろう?私は目を近づけてみた。歯?ぺいの歯だ。あの唯一残って…

六月十九日(木)

療法食の缶詰が急に残り少なくなってきた。それで、追加注文することにした。なぜなら、退院後、暫くの間は、口からの食事を補う目的で療法食を追加してきたけど、数日前から口からの食事を全くしなくなってしまったからだ。肉もダメ、魚もダメ、どんな好物…

六月十六日(月)

最近のぺいは、かなりの時間、水の入った器のある場所で過ごすようになった。これはあくまで推測になるけど、癌で腐敗している患部が熱を持っているのを冷ましたり、上顎や喉の渇きを水分で潤したいように感じられる。それで、私は、毎日欠かさず三十分程、…

六月十五日(日)

この日、今日から始めようと思った事があった。それは、ぺいの様子を動画として残しておくことだ。三月以降、今までは写真を撮ってきた。でも、写真だと点でしか記録が残らない。それが、動画だと声や音、その場の空気感も全て記録として残せる。私は、余命…