「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

六月二十八日(土)

日中、夜、どうすれば臭いに悩まされずに眠れるのか考えていた。それで、ある事を思いついた。それは、マスクをして寝れば問題ないのではという閃きだった。そもそも、こんな簡単な事、どうしてもっと早く思いつかなかったのか?早速、マスクをして寝てみる…

六月二十七日(金)

今日も寝る時刻になった。既にぺいは、いつもの場所であるベッドの上の枕元に陣取って寝始めている。前にも書いたけど、私が寝ようと思って準備を始めたら、ぺいも寝る準備を始める。それにしても、腐敗臭は強まるばかりで、本当に強烈な臭いだ。でも、ぺい…

六月二十六日(木)

そういえば、ぺいは寝る時、いつも枕元で寝るようになったけど、ちなみに、寝る時の私の顔の位置と、ぺいの顔の位置は、せいぜい離れても三十センチぐらいだ。だから、最近、寝ていると、ぺいから漂ってくる腐敗臭に鼻を突かれる事が急に多くなってきた。本…

六月二十四日(火)

仕事を終えて帰宅すると少し腐敗臭がした。あらためてぺいの口を見てみる。すると、下顎の歯の抜けたあたりの顎の肉が少しなくなっているように見えた。なんとなく顎の先端から五ミリぐらいだろうか?二日前には、歯が抜けただけで、あの時には、その他に感…

六月二十二日(日)

夜、ぺいは、いつものようにベッドの上で寝ている。そして、二十一時を過ぎた頃、すくっと起き上ってベッドの上から下りた。すると、寝ていた場所に何か見慣れないものが落ちている。一体、何だろう?私は目を近づけてみた。歯?ぺいの歯だ。あの唯一残って…

六月十九日(木)

療法食の缶詰が急に残り少なくなってきた。それで、追加注文することにした。なぜなら、退院後、暫くの間は、口からの食事を補う目的で療法食を追加してきたけど、数日前から口からの食事を全くしなくなってしまったからだ。肉もダメ、魚もダメ、どんな好物…

六月十六日(月)

最近のぺいは、かなりの時間、水の入った器のある場所で過ごすようになった。これはあくまで推測になるけど、癌で腐敗している患部が熱を持っているのを冷ましたり、上顎や喉の渇きを水分で潤したいように感じられる。それで、私は、毎日欠かさず三十分程、…

六月十五日(日)

この日、今日から始めようと思った事があった。それは、ぺいの様子を動画として残しておくことだ。三月以降、今までは写真を撮ってきた。でも、写真だと点でしか記録が残らない。それが、動画だと声や音、その場の空気感も全て記録として残せる。私は、余命…

六月五日(木)

最近のぺいの食事は、鳥のモモ肉や豚肉、そして、マグロやサバを軽めに湯通ししたものを、食べやすいように細かく微塵切りにして与えてきた。でも、唯一、一本だけ残っている前歯が、さらに、手前に傾きつつあって、その歯もグラグラしている。それで、食べ…

五月二十八日(水)

仕事から帰宅すると、ぺいが、いつものように出迎えてくれた。嬉しい。この平凡な日々が、本当にどれだけ幸せな事かと心底思う。でも、そんなぺいの姿が朝出掛けた時と違っている。あれ?黄色い布を首元に纏っている。おしゃれ?いや、何やら涎掛けのようだ…

五月二十六日(月)

退院後、食事の量は、徐々に回復したけど、それでも歯を含む顎の半分を失った影響で食べ物を口の中に運びにくくなっている。そういった事も影響しているのだろう。元気な頃と比べると微妙に食事の量が減っている。そこで、退院後は、口からの食事を十分に終…

五月二十五日(日)

十五日に注文して、到着を凄く楽しみにしていた胃瘻チューブ用のポケットがついたニットが届いた。少し到着までに時間が掛ったけど、一つ一つが手作りのようなので仕方がない。ちなみに、胃瘻チューブ用のポケットは、脇腹のところについている。普段は、そ…

五月二十四日(土)

母がぺいの様子を見に来た。手土産は鶏のモモ肉と豚肉。母は、湯通しした肉を食べやすいように細かく千切って食器に入れてくれた。その途端、それをぺいは我を忘れたかの如く凄く嬉しそうに食べ始めた。おぉ~!何という食欲。きっと、母は、生きている間に…

五月二十三日(金)

涎が凄い。一時的に止まる事はあっても、四六時中、涎を流している。そして、その涎は、ぺいの胸元あたりに付着したり床に落ちたりしている。床に落ちた涎は、拭き取れば良いけど、胸元に付着した涎は、その部分に温水を当てて洗ってやらないと簡単には取れ…

■第三章 余命

余命。その意味は誰しも理解出来る。しかし、どれだけ余命というものを身近に感じているだろうか?もしかしたら、どんなに元気であっても数時間後には、この世にいないかもしれない。私は思う。もし、生まれたと同時に余命が宣告されていたらどうだろうか?…

五月二十二日(木)

今日は放射線治療の八回目。長かった治療も予定通りだと今日で最後になる。四月十日の二回目の通院から、ずっと母にお願いしてきたけど、最後は、先生が今後の治療方針について相談したいとの事なので、私が、行くことした。ちなみに、この一週間は、それな…

五月十五日(木)

七回目の放射線治療日。放射線治療も残すところあと二回。今週の様子は少しだけ元気のない日があったぐらいだ。きっと、放射線治療の影響で身体がだるいのだろう。でも、食欲の方は順調だ。退院して暫くは、昔のように食事をしてくれなかったけど、このとこ…

五月十日(土)

この日は、東京の市ヶ谷に用事があったので出掛けた。市ヶ谷には、市谷亀岡八幡宮という神社がある。この神社は、都内一のペット祈願神社で、かの生類憐みの令を発布した五代将軍綱吉の母の寄進に端を発する神社との事。もちろん折角なので立ち寄る事にした…

五月八日(木)

六回目の放射線治療日。今週も、食事も元気さも全て問題ない。放射線治療も残すところ三回の予定だ。気候も少し陽気になって過ごし易くなってきた。ぺいもベランダに出て外の空気に触れる時間が長くなっている。もし、手術をしていなければ、今年、新緑の風…

五月一日(木)

五回目の放射線治療日。今日から五月だ。四月の桜の景色のカレンダーを捲ると、五月の新緑の景色のカレンダーが目に飛び込んできた。ぺいと私が、いつも一緒に過ごしている部屋に掛けてあるカレンダー。過ぎ去った月のカレンダーを捲って、新たな月の景色を…

四月二十四日(木)

四回目の放射線治療日。今週は、もうすっかり元気だった。癌になる前と全く変わらない感じだ。この状態が、十日程前から続いている。ただ、口からの食事の量は、昔と比べると六割程だ。だけど、シリンジからの食事の注入は、二十一日から少し中断している。…

四月十七日(木)

三回目の放射線治療の日。今日は、CTスキャンも予定している。ところで、先生への嬉しい報告と言えば、最近、口からの食事量が急激に増えたということだ。もちろん癌になる前と比べると少ない。だけど、それでも六割程度にまで回復している。以前と比べて…

四月十日(木)

再び放射線治療の日がやってきた。今回の通院からは、当初の予定通り、母にぺいを病院に連れていってもらうことにした。私も休暇を取ろうと思えば取れなくもないけど、さすがにこれ以上、何度もペットの事で有給を取る訳にもいかないからだ。それにしても、…

四月六日(日)

季節は春。部屋の外は桜が満開だ。もし手術をしていなければ、三月十五日から食事を食べられなくなっていたから、今日までは、生きていられなかったはずだ。だから、術後の経過も、まだ決して落ち着いてはいないけど、ぺいに桜を見せてやりたかった。もちろ…

四月三日(木)

今日は二回目の放射線治療の日。病院を退院してから八日が経過した。この一週間、口から食事は、ほぼ食べなかった。入院中には食事をしたと聞いていたけど、退院してからは、以前の食事量を百だとすると、良く食べた時でも三ぐらいで、特に、三月の二十八日…

三月三十日(日)

日曜なので仕事は休み。今日は、一日中、ぺいと一緒に過ごそうと決めていた。大切なぺいが、癌によって命を奪われる心配がなくなる日まで、とにかく一分一秒でも多くの時間を一緒に過ごしたかったからだ。それと、これから先、休日は、極力予定を入れないよ…

三月二十八日(金)

先日注文していた冬虫夏草の粉末が配達されてきた。この冬虫夏草は、動物用として獣医師も推奨している商品のようで、値段は約八千円。二週間分程度の量が入っている。製品のホームページには、ピンポイントで扁平上皮癌の治療に効果が見られたという事例は…

三月二十六日(水)

今日は待望の退院日。入院期間は、結局、ほぼ予定通りの十日間になった。それと、また、ぺいと一緒に暮らせるかと思うと、朝から嬉しくて仕方なかった。退院手続きは、朝の九時に来て下さいとの事だったから、仕事は、急遽休暇を取った。そして、九時前に病…

三月二十五日(火)

病院から電話があった。手術後、面会に訪れた二十三日の日に、口から初めて少しだけ食事をしたとの事。そして、昨夜は結構食べたので、明日以降であれば退院可能になりますとの連絡だった。念のため聞いてみた入院費は、やはり、入院日数によって加算される…

三月二十三日(日)

今日は、入院当初から母と一緒に面会に行く約束をしていた日。手術から五日経過したので、きっと、術後の痛みもある程度治まって、周りの環境にも慣れてきた頃に違いない。この日は、ぺいと、たっぷり一緒の時間を過ごしたかったから、面会開始時間と同時に…