「神様からの贈り物」

~扁平上皮癌との闘い~

まだ数年は続くと思っていた、愛猫「ぺい」との平凡な日常。
しかし、その後の誤診と突然の癌宣告...。
それでも、再び元気になれる奇跡を一緒に夢見た記録です。

三月十九日(水)

今日は面会に行く日。たったの丸一日ぶりに会うのに、朝から再会出来るのが凄く嬉しかった。手術は、昨日の夜に終わったばかりだから、まだ手術から二十四時間経過していない状態での面会になる。実は、私も全身麻酔の手術をしたことがある。だから、人間と…

三月十八日(火)

やっと待望の手術日を迎えた。T動物医療センターには、手術日が、週に二日ある。そして、手術日には、外来診療は一切なく終日手術のみがおこなわれる。私は、少しでも早い時間に手術してほしいと思ったので、そのように希望を伝えてみた。なぜなら、なかな…

三月十七日(月)

いよいよ、今日は待ちに待った入院の日。朝、起きて目を開けてみると、びっくりだった。何と、ぺいが、久しぶりに私と同じ枕で寝ていたのだ。ぺいが、枕で寝るときは、枕の横の部分に頭を乗っけているのが定位置。だけど、涎が出るようになってからは、枕で…

三月十六日(日)

今日も一日中、何も口にしなかった。昨日から丸二日間、何も食べていない。そう言えば、地元の病院の先生が、もし、手術をしなければ、今月いっぱいの余命と言っていた。今、まさにそれが現実として感じられるようになってきた。猫の絶食は人間と違って三日…

三月十五日(土)

きっと、猫は食べるという事が、間違いなく人間以上に幸せな事の一つなんだろうと思う。私は、もしかしたら扁平上皮癌かもしれないと感じた日から、ぺいが大好きだった食べ物を、とにかく惜しみなく与えるようにしてきた。たとえば、ペット用のおやつとして…

三月十四日(金)

昨晩は、色々と考え事をしていた。それで、幾つか質問したい事が出てきたので、手術前の相談という事で担当の先生宛に電話をした。この日から、病院とのやり取りは、T動物医療センターに変わった。一つ目は、癌が根治して寿命が数年単位で伸びる可能性につ…

T動物医療センター

全ての生き物に必ずいつかは訪れる死。そんな事は分っている。だけど、そんな事、意識する事もなく過ぎ去っていった時間。その過ぎ去っていった時間は二度と繰り返されない。それは、これから訪れる時間でも同じこと。ぺいは、あと、どれ位、この世にいられ…

三月十二日(水)

ぺいは、ベランダに出て外の景色を眺めている。猫だって早朝の朝日と澄んだ空気はきっと気持ちが良くて、それを全身で感じているのだろう。ぺいの目線の近くでは、小鳥が「チッチ」、カラスが「カァカァー」と飛んでいたり、眼下に人や車が忙しなく動いてい…

三月十一日(火)

引き続き、少しでも空いた時間があれば、とにかく、片っ端からインターネットで扁平上皮癌に関する情報を収集していた。すると、口の中に出来た良性の腫瘍であっても、それに刺激を与えると癌化する場合があるという記事を見つけた。そういえば、二月の中頃…

三月十日(月)

電話が鳴った。病院からだ。T動物医療センターへの入院が、一週間後の三月十七日で予約出来たという連絡だった。もちろん快諾した。紹介状をお渡ししますので来院下さいとの事だったので、仕事は定時に切り上げて病院に向かった。実は、ずっと気になって先…

三月九日(日)

朝、電話が鳴った。病院からだ。何だろう?まだ、検査の結果は出るはずがない。そう思いつつ電話に出てみる。すると、なんと検査の結果が出たとの事。私は、「あれ?土日に検査結果が出る事はなかったのではないですか?」と聞いてみた。すると、「昨日、夜…

三月七日(金)

前回組織を採取してから四日が経過した。遅くても夕方ぐらいまでには、病院から連絡があるものと思っていた。なぜなら、前回の検査の時には、三営業日で結果が分かったからだ。今回は、今日で四営業日も経過している。もし、今日連絡がこなければ、検査をし…

三月五日(水)

昨日、明日連絡しますと伝えていたT動物医療センターの予約の件について先生に連絡。「組織病理検査の結果が分ってから予約します」と伝えた。先生からは、「あっ、そうですか。分りました」との返答だった。

三月四日(火)

先生から携帯に連絡が入った。内容は、A大学附属病院の方は、予約がいっぱいで手術は一か月半程、先になるという事。「どうされますか?T動物医療センターなら、そんなに待つ事なく見てもらえると思いますけど」という内容だった。少し回答を躊躇していた…

三月三日(月)

今日は、手術日。ついでに、あらためて組織病理検査もある。仕事は、有給休暇を取得した。朝起きて、ぺいの様子を見てみると血の混じった涎をツーっと垂らしている。どんどん腫瘍が大きくなって組織が破れて出血してきたようだ。そんな様子のぺいを、午前中…

三月二日(日)

この日、ぺいの写真を久しぶりに撮った。昨日の診断を受け、これから先、ぺいがどのような経過を辿るか分らない。とにかく生前のぺいの様子や思い出を一枚でも多く残しておきたいという気持ちになったからだ。これからは、なるべく写真を毎日撮るようにしよ…

三月一日(土)

私は、二日早い十二日目に、二週間後に来て下さいと言われていた約束を破って、ぺいを病院に連れて行った。そして、「まだ、二週間は経ってませんけど、どんどん口の中が腫れてきてるんです」と伝えた。すると、先生は、ぺいの口の中を見るなり、表情が突然…

二月二十二日(土)

あれから、五日程経過した。私は、ぺいの口の中の様子が気になっていたから、なるべく毎日チェックするようにしていた。すると、何となく少し赤くなっていた箇所が腫れてきたような気がした。そして、さらに七日目。明らかに腫れが大きくなっていると思った…

二月十八日(日)

早速、動物用の歯磨きセットを買いに行った。ぺいの口内環境を少しでも良くなるようにして、赤くなった箇所を早く元の状態に戻してやりたかった。そして、歯磨きに初挑戦。ただ、猫が、大人しく歯磨きをさせてくれるはずがない。でも、高齢猫の口内メンテナ…

二月十七日(土)

朝、病院から電話があった。検査の結果が出たそうだ。涎は、相変わらず止まっていない。でも、ずっと思っていた。あの赤くなっているのは、原因が分かりさえすれば比較的簡単な治療で直るはずだという事。ただ、もう、高齢猫なので、これから色々、世話のや…

二月十一日(祝)

予約していた組織病理検査のため、朝、病院に連れて行った。そして、夕方、引き取りに来て下さいとの事だったので迎えに行った。先生の説明によると、細胞は検査専門の会社に送って検査するそうで、検査の結果は、一週間程度で分かるとの事。結果が分かり次…

二月九日(日)

ぺいの涎の件で病院に行った。嘔吐の治療後、涎を出すようになり、ちょうど三週間が経過していた。この間、私は、インフルエンザになったり、母は、入院したりしたけど、特に、ぺいを病院につれてゆくのが後回しになったという感覚はなかった。なぜなら、元…

一月二十四日(金)

この時期、私は、仕事で、とあるプロジェクトのリーダーを命じられ、入社以来、一番の忙しさだと思いながら日々を過ごしていた。そんな折、また、自分自身の身体に体調不良を感じた。まだ、一月が始まって三週間だ。年明け早々、風邪を引いたばかりだったの…

一月十七日(金)

ぺいが再び嘔吐した。今回は、週末という事もあり、翌日、直ぐに病院に連れて行くことが出来た。本来であれば、ペットの保険に入っていないから、今までであれば、二、三日、様子を見ていた。だけど、もう、十歳を超えて高齢になっている事、それと、前回、…

■第二章 癌の宣告

年が明け、二〇一四年がスタートした。一年の計は元旦にあり。私は、近年、初詣は必ず元旦に行くようにしている。そして、おみくじも引くようにしている。この年も元旦のお昼頃、近くの神社へ初詣に出掛けた。まずは、お参りで願い事をした。一つは、家族全…

嘔吐入院

それから、約四か月が経った。季節は五月の後半。比較的過ごし易い時期のはずだけど、気温の変化は大きかったように思う。そんな週半ばの水曜日、またしても、ぺいが嘔吐した。実は、確か五歳を過ぎたぐらいの頃から、時々、嘔吐するようになっていた。ただ…

東日本大震災

二〇一一年三月十一日十四時四十六分。未曾有の大地震が発生した。私は、会社の会議室で業者と打ち合わせをしていた。この日は、電車が完全に止まってしまい全く復旧の見込みが立たなかったので歩いて自宅に帰った。凄く風が強くて寒い夜だった。そして、余…

いつも一緒!

一緒に暮らし始めて数年が経過した。その後のぺいと私は、年月を重ねるごとに、お互いに分り合える関係になっていったように思う。それと、子猫だった頃、隔離して寝ていた事が影響したのかどうかは分らないけど、私が、家の中を移動すると、ぺいも同じ場所…

ぺいとの楽しい生活

そうして、再び電車に乗って自宅に戻った。でも、今度は、元気な子猫と一緒だ。早速、猫の名前を考える事にした。子猫は雄。別に雄雌かどうかには拘らなかった。う~ん、「ニャー王」そうだ!「ニャー王」にしよう。猫の王様、我が家の王様、猫の鳴き声と同…

出会い

それから数か月後、私は、引っ越しを決めた。ただ、引っ越しの理由に猫の出来事は全く関係なかった。マンションが電車の高架橋の隣に建っていて、住んでいる階の高さも高架橋と同じ高さで凄く音がうるさかったというのが一番の理由だった。でも、引っ越し先…